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ヤンの銀英伝

2.ヤン・ウェンリーの足跡「遺産」(ヤンのベンチ)



★ユリアンは公園の、いまは故人になった宇宙随一の魔術師の「ベンチ」に腰をおろしていた。そして、ヤン大佐時代の出会いを回想していた。「何年か前の僕がいる」「こうやって、想いというものは受け継がれていくのだろうか。ヤン・ウェンリーの想いを、自分が受け継いだように...」

★「ヤン提督さえ生きていれば残留してもいいのだが」というもの達をアッテンボローは叩き出した。

★「テレビの三文アニメならば、制作者の都合によって死んだ主人公も生きる返るだろう」「だが俺達が生きているのはそれほど都合の良い世界ではない」 「失われた命は決して帰ってこない」「それだけに命というものがかけがえのない存在という世界に生きているんだからな」 とアッテンボローはヤン提督の死を悔やんだ。

★「ヤン提督の生前は祭りの準備に忙しかった。死後は残っていた仕事を片付けるのに骨を折った」・・・アッテンボローの手記より(ポプランは名文ではないと冷やかした)

★ユリアンは「ヤンのベンチ」の公園を出たところでカリンと出会った。カリンはヤンの思いをユリアンに語った。「ヤン提督って、ほんとうに、すこしもえらそうに見えない人だったわね。でも、あの人が宇宙の半分を支えていたんだわ」「実を言うとね、ヤン提督が生きてらしたころは、それほど偉大な人だとも思っていなかったのよ」「提督の息吹は、きっと時がたつほど大きくなって、歴史を吹き抜けていくのでしょうね」

★ユリアンは士官の一人にからまれた。「つけあがるんじゃない。ヤン提督のお生命ひとつ守れなくて、何が司令官だ!」

★カリンは言い返さないユリアンにじれていた。「ヤン提督が、ユリアン・ミンツを非難するとも思えないわ。ユリアンが駆けつけるまで待てなくてごめん、と、かえってあやまることでしょうね」

★ユリアンは暗殺されたヤンを侮辱されて感情を荒立てた。「もう一度言ってみろ。暗殺された人間は、戦死した人間より格が下だとでもいうのか」・・・ポプランが仲裁し、二人をコーヒーに誘った。

★この一件を耳にしたシェーンコップはキャゼルヌに語りかけた。「ユリアンが未熟を自覚しながら司令官職についたのは、ヤン提督を守れなかった責任を、あいつなりに果たそうとしているのさ」「ヤン提督の理念を受け継いで実現させようとしていることを理解できない奴は出ていってもらうべきだろうな」


★キャゼルヌは別の正論で応じた。「異分子をすべて排除するのは、民主政治の原理に反するだろうな」


★シェーンコップはヤンの弟子を評価して言った。「ヤン・ウェンリーはとても英雄には見えない人間だったが、愛弟子もそれに倣うか」「歴史はどう語るか。ユリアン・ミンツはヤン・ウェンリーの弟子だった。ヤン・ウェンリーはユリアン・ミンツの師だった。さて、どちらになるものやら」


★ユリアンは「ヤンの思考の軌跡」をヤンのメモと自分の記憶で毎日すこしづつ整理した。ユリアンは、「正しい判断は、正しい情報と正しい分析の上にはじめて成立する」という言葉に想いを寄せた。3年前のドーリア星域会戦の前に一通の報告書を受信した時である。クーデター派の第11艦隊の位置を知らせてきたものである。これを知ってヤンは小躍りしたが、直ぐに同士討ちの愚をおかすことに気を重くした。(この小躍りのシーンはヤンの別の一面を垣間見ることができる、と、いうよりイメージを壊している)


★フレデリカはヤンの残したものに思いを巡らした。「あなたのせいなのよ。私が軍人になったのも。イゼルローンがいつのまにか民主主義の最後の砦になったのも。皆がいつまでも祭りの夢を追い続けるのも」「生き返っていらっしゃい。自然の法則に反したって一度だけなら、赦して上げる。」


★ヤンの最後の言葉を、フレデリカは聞き得なかったが、彼女には判っていた。「ごめん」か「ありがとう」か、どちらかだということが。そしておそらく前者であることを...。


★ユリアンらはトリューニヒトが新領土総督府高等参事官になったという人事を聞いてあきれた。そして、トリューニヒトと地球教の関係を聞き憤った。ユリアンはふたつの使命を果たしたかった。ひとつはラインハルトに拮抗して、民主共和政治の種子を歴史の土壌に埋め込むことである。もうひとつは、ヤンを謀殺したもの達への復讐である。